保育園で働いていると行事の担当になる事があります。行事をどのように進めたら良いのか悩む方も多いのではないでしょうか。今回は沖縄の慰霊の日6月23日に合わせた取り組みを紹介します。子ども達に戦争という悲しい出来事から今ある幸せ、「平和」について優しく心に残る活動内容を紹介します。年齢や園の方針に合わせて、無理のない形でご活用ください。
小さな子ども達にとって「平和」や「いのち」は抽象的ですが、身近な体験(ケンカしない、仲良くする、ありがとうを伝える)と結びつけることで心に残ります。怖がらせずに、優しい言葉で、静かな雰囲気の中で伝えるようにしましょう。
活動のねらい
・沖縄の慰霊の日について、やさしく知る
・命の大切さ、平和のありがたさに触れる
・黙とうや表現活動を通して、気持ちを表す
子ども達に伝えるときのポイント
ポイント①難しい歴史は避けて「大切なこと」にフォーカスすること。
「昔、沖縄では沢山の人がとても辛い思いをした日があります。だからみんなで「ありがとう」や「やすらかに」という気持ちを伝える日なんだよ」
ポイント②平和の大切さを身近な言葉で伝える。
「平和ってどんなことだと思う?」
「ケンカをしないで仲良くすることはとても大切。みんながニコニコ笑顔で暮らせる毎日がとても大切です。それが平和っていうことなんだよ。」
ポイント③祈りや黙とうを通して体験で伝える。
「今から静かに目を閉じて、心の中で「ありがとう」や「みんながずっと笑っていられますように」とお祈りしてみようね。」
おすすめの絵本
「へいわってどんなこと?」童心社(浜田桂子)
「へいわってすてきだね」ブロンズ新社、(詩・安里有生)(画・長谷川義史)
「いただきます」沖縄時事出版発行(文・玉城裕美子)(絵・磯崎主佳)
子ども向けの平和に関する絵本の読み聞かせを行い、感情に寄り添いながら伝えることも効果的です。
子ども達とできる活動
年長さんになれば折り紙で鶴を折ったり、絵を描いたりすることで平和の時間を感じることができます。付箋紙に平和を感じる瞬間を言葉で書き、大きなボードに貼ることで保護者にも見ていただき、改めて今ある平和に気がつき、平和に対する感謝の心が育まれます。
お祈りすることは低年齢児でもできますので、一緒に手を合わせて黙祷してみてくださいね。
平和集会などの際の具体的な流れ
「今日は何でみんなで集まったかわかりますか?」
子ども達は思い思いにそれぞれの思う発言をするので保育者は丁寧に聞き、うなずき共感する。
「そうだね。今日は戦争で亡くなった人たちにお祈りし、ありがとうを伝える日だね。」
「80年前、沖縄では戦争がありました。沢山の人がとても辛い思いをした日があります。みんながまだ生まれる前のことです。先生もお父さんお母さんんも戦争を知りません。皆んなの、おじいちゃんやおばあちゃんよりも年上の90歳くらいのおじいちゃんおばあちゃんが戦争を経験しました。」
「6月23日は戦争が終わった日です。だからみんなで「ありがとう」や「やすらかに」という気持ちを天国にいるおじいちゃんやおばあちゃんに伝える日なんだよ。」
絵本を読みます。「へいわってすてきだね」を読み聞かせした後に、黙祷の時間を作ります。
「みんなで、戦争で亡くなったおじいちゃんやおばあちゃんに届くように両手を合わせてウートートーしましょう。慰霊の日に手を合わせて祈ることを黙祷と言います。」※ウートート沖縄で仏壇やお墓の前で手を合わせて祈ることを言います。
「黙祷します。今から心の中でありがとうって言おうね」「黙祷する時は、目を閉じます。そして口も閉じます。みんなのありがとうを伝えましょう。」年齢に合わせて黙祷できる時間を決めます。30秒から1分程度。優しいピアノやBGMなど小さく音を流すのも良いでしょう。オススメ楽曲「月桃」作・海勢頭豊(うみせどゆたか)
「ゆっくりと目を開けてください。」BGMの音量を小さくしながら止める。
「黙祷でどんなありがとうを伝えたかな?」「お話しし
てくれる人はいますか?」子どもたちからの言葉を拾い、付箋紙に書いていく。書いた付箋紙をボードに貼っていく。例えば、ケンカしない、仲良くする、ご飯を食べるなど。
※(へいわってなあに?)のボードを事前に作っておき、付箋紙も用意しておきます。立て看板に画用紙を貼るくらいのもので大丈夫です。
「そうだね。沢山のありがとうの言葉が出てきたね。平和について考えることはとても大切です。」
「このボードは玄関に置いておきますので、お父さん、お母さんがお迎えに来た時には一緒に書いて見てくださいね。」保護者に対しても平和に向き合ってもらい、今ある幸せを感じることができる場を工夫しましょう。
平和の反対は無関心です。
終わりに、平和の反対は何でしょうか?戦争?違います。それは無関心です。戦争の反対も無関心です。心が何だかズキっとしますね。この機会に今ある幸せについて考え、関心を持ちましょう。
私の好きな言葉で締めくくります。
「ぬちどう宝➕なんくるないさ」
この言葉は2つの沖縄の大切な考え方が合わさったものです。
①命どう宝(命は宝)
沖縄戦の体験や過去の歴史を背景に「生きているだけで素晴らしい」という命に対する強い尊厳を表す言葉。命が一番大切。何があっても、まず「生きていれば大丈夫」という信念を感じます。
②なんくるないさ(なんとかなるさ)
よく誤解されますが、「なんとかなるよ」と投げやりに聞こえるけれど、本来は誠実に正しい心で努力し、時を待てば必ず道はひらけるという意味です。
※元の表現は「まくとうーそーけーなんくるないさ」(正しいことをしていれば、きっとなんとかなる)
沖縄の方言で耳にしたことがあるかとも思いますが、本来の意味は「命があればなんくるないさ」です。「なんとかなるさ」=「気楽にいこう」という軽いニュアンスで使われることも多いですが、そんな楽観的な意味だけで終われない程、深くて温かい人生観を表す言葉です。壮絶な沖縄戦を体験したご先祖様が残してくれた大切なウチナーグチです。
命があればなんくるないさ〜☆
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